取引されたもの

私は男性経験がないまま、風俗店で働くことになった。

ある日とてもガタイのいい客が来た。
プレイ開始早々「処女奪ってくださいって言え」と命令した。何度も断ったが、「泣いて帰るハメになってもいいの?」と脅された。
密室。部屋のドアまでは約20m。私は何も身につけておらず、手元にあるのはバスタオルのみ。カバンやスマホは少し離れたところにある。

すぐに逃げられない。助けを呼べない。
あまりの恐怖に、要求を飲んでしまった。
するとものすごい力で四つん這いにされ、後ろから鼻と口を手で覆われた。息も出来ず、全く動けないほどの力だった。

「このまま俺が入れちゃったら、泣いちゃう?」
思い出しただけで、当時の恐怖が体を支配する。

「初めては結婚したいぐらい好きな人がいい」という同級生の言葉が脳裏をよぎった。

ひたすら泣いて、許しを乞うた。60分。あまりにも長い時間だった。
涙でぼろぼろの私を見て、その男は満足したようだった。
「口内射精」のオプションを付けていたが、結局射精すらせず、「楽しかったよ」とだけ言って帰った。

私は絶望の淵に立たされたというのに。本人は、「楽しかった」。
アンケートに記入されていた点数を盗み見た。100点。
射精できず、オプション料も無駄になったにも関わらず、100点。「楽しかった」。

彼が60分15000円で買ったものは。
私が60分6000円で買われたものは。