報道の影響力を女性の人権侵害のために使わないでください

≪2025年7月24日、複数の報道機関により、東京・新宿区における性売買女性の摘発に関して、4名の女性の顔や名前、年齢、逮捕の様子が動画等で撮影され、報じられました。性売買女性を被害者ではなく加害者としてみなし、さらし者にする報道に抗議し、女性を処罰の対象とする売春防止法の改正と買春者処罰法の制定を強く訴え、緊急記者会見に参加し、以下のメッセージを報道各社に訴えました。≫

今回の報道を目にしたとき、言葉にならないほどのショックを受けました。震えて涙がでそうになりました。

彼女たちの姿が全世界中に晒されたことで、無数の人たちから「顔がどうだ」「こんな顔でよくできるね」「こいつとだったらやれる」と、言われるんだろうと思いました。実際にこれらの記事には「いいじゃん」「どれも無理だわ」「チェンジで」「これに金払うのか」「○○さんだけはアリだな」「きたねえな」という読者のコメントが溢れています。

今回の報道により、顔や名前を晒されてしまった女性たちはこれから、犯罪者と言うレッテルを貼られて生きないといけなくなりました。彼女たちを買った男性は報道でもモザイク処理がなされていました。買春した人はどこのだれかも報道されることもなく、犯罪者にならないのに、性を買われた女性たちだけが責められます。

性売買女性として顔や名前を出されたら、生きていけないです。就職もできない。この先、恋愛や結婚をしたいと思っても、「どうせ性売買したんでしょう」という目で見られ、生きていくのに100%不利になります。それで追い込まれたら、死ぬしかありません。

私も性売買を経験した当事者ですが、顔を出していなくても、これまでの傷つきから、人の目を気にして生活しています。性売買を経験した女性たちは、性を買われるなかで、あらゆる形での暴力、搾取、被害を受けます。そして、社会から差別と偏見の目で見られます。そのことで、被害から抜け出して、性売買をしないで生活できるようになっても、人の目を気にして生きて行かなければならなくなります。自分が性売買をしていたこと、体を売っていたことが誰かに気づかれるんじゃないか、自分を買った男に出会ってしまわないか、いつも怖くて、外に出られなくなってしまいます。

こんな報道がされたことで、私も、どこにいても、性売買をした女性なんだという目で見られる、そうみられていないとしてもそうみられているのではないかと怯えてしまい、夜も眠れなくなっています。

今も、大久保公園周辺に立っている少女や女性たちには、頼れる人がいなかったり、ホストなどで借金を背負わされたり、男の人に騙されてお金を稼ぐように言われて立っている人ばかりです。今そこにいる少女たちも、この報道を見て、誰も守ってくれない、私もいつかこうなるんじゃないかと怖いと思います。死にたくなると思います。

私が性売買をはじめたのは14歳の時でした。帰れる家がなく、仕事もなく、路上で「いくら?」「5000円でどぉ?」って言われ、応じる日々でした。病気を移されたり、レイプされたことも妊娠したこともあります。自分を買おうとする男性と性行為をすること、それ自体が自分をえぐるような行為でした。買春者は私を性欲処理の道具として扱い、人として扱っていないからです。

支援団体につながり、性売買から抜け出した後も、いつも、何かにおびえたり、周りの目を気にしてしまったりしています。自分を買った買春者に見られているんじゃないかと、周りを、キョロキョロしてしまうのがとまりません。

メディアのみなさんにお願いです。どうしてその子たちが性売買をしなければならなかったのか。女性たちの個人的な問題としてではなく、背景にある苦しみや事情、そしてなにより、買春者がいることや、大久保公園周辺に立つ少女や女性達を管理し性売買させる組織や人物がいることを報じてください。表面的な報道ではなく、取材をして性売買の問題をしっかり伝えてください。

本当にお願いです。その子たちの立場にすこしでも立ってください。

頭の片隅に

その子の人生があること

その子のこれからの生き方に

大きくかかわってくることを置いてほしいです。

報道の影響力の大きさを忘れずに、その立場を女性たちの人権侵害のために使わないでほしいです。

どうかお願いします。(なお、20代)